Seminars

「第80回ホイットニービエンナーレ ”QUIET AS IT'S KEPT” セミナー

日時:6月23日木曜日午後2時半〜4時半
場所:ホイットニー美術館
講師:中里スミ氏
参加者:松尾明子、渡辺啓子、早川朋子、永野みき(順不同、敬称略)

 

 
WHITNEY BIENNIAL ”QUIET AS IT'S KEPT"
昨年から延期されたホットニービエンナーレは1932年にアメリカン芸術の調査として毎年、絵画と彫刻を交互に展示して以来、長い道のりを歩んできました。1970年にはその分類には入らない作品が多くなり展覧会は隔年に変更されました。昔はアメリカ国籍を持つアーティストのみに限定されていましたが、時と共に枠が広がり、今年の63名のアーティストはアメリカと何らかの関わりがある世界中のアーティストが選ばれました。この中には既に亡くなられたアーティストでこの新しいグループに影響を与えたアーティストも含まれています。

現在のミートパッキング地区の建物へは2015年に移転しました。ハドソン川と周囲を取り込み開放的な空間です。創立後3600人の作家が選ばれてきました。

テーマは「静かにされていながら」ノーベル賞受賞者のアフリカ系アメリカ人著者トニーモリソンの本からの引用。作品はコロナ禍で作家が自己内面感想により作成、アメリカ美術の魅力と心強さを他民族的に多文化的に包括的に社会政治活動的に表した作品ばかりでした。

このセミナー参加者は自分が興味をもった作品を挙げ、その理由を説明するよう問われました。
それぞれの作品写真の解説欄に参加者のリポートが表示されています。なぜこの作品を選んだかなど、それぞれ興味深い内容です。一読をお勧めします。この展覧会は9月5日まで続きます。今回参加できなかった方達も是非見に行ってこのデスカッションが続けられたらと思います。中里スミ

……………………………………………………………….

ラルフ レオン 1952年オハイオ州シンシナティ生まれ;ブルックリン在住
題名ないシリーズから 2015−22
「私達と同じ時代に生まれて、動物や虫が大好きで音楽が好きで、おそらくNYCに憧れてBrooklyn にやってきたアーティストではないかなと想像した。カラーテレビやアニメ、音楽などにも影響されながら日常を表現して描く素直なタッチがほのぼのと心地良い。」

ハロルド  アンカート 1980年 ベルギー、ブルッセル生まれ;ニューヨーク在住
人を導く光 2021
オイルスティック、グラファイト、キャンバス
「ビデオインスタレーションの作品から離れて白い壁に展示してあったこの作品を見て吸い込まれるようにじっと見てしまった。それこそがHarold Ancart の意図するところ。私という魚が絵に釣られてしまった気がしたが、数多い作品の中で自分が面白いと感じる作品がまだビエンナーレにあったことが嬉しかった。私は「これからも自分の描きたいものを描いて良いんだ」と思い帰途についた。」

ジェーン ディクソン 1952年イリノイ州シカゴ生まれ、ニューヨーク在住
モーテル5、2020
「なんか表明が絨毯みたいになってて面白い手法だな、と思いました。」無視される傾向の商業的な看板の夢と期待を自分が証人となる、5枚のうちの一枚

アウィルデ スターレングージュプレー 1947年 プエルト・リコ、サンファン、プエルト・リコ、サンファン在住
…目隠しをして、2020-
オイルスチック、紙のインスタレーションとビデオ
「何本かのビデオやインスタレーションを見てビエンナーレはやっぱりわからないと思っていたら Awilda の作品に出会った。目隠しして描く壁面ドローイング。彼女の頭の中には音楽(作曲 John Cage)が流れ、すでに身体の動きが目隠ししていても何を描くか準備もできていたと彼女は言う。この場で描がかれた作品たち。彼女のドローイングは繊細だが力強く生きる勢いを感じさせる。そこにとても惹かれた。なんて自分を解放することができる作家なのか、と一目見て思った。その後に、目隠しをして、踊りながら描いたと知ったが、目隠しをすることで起こるハプニング性を作家が楽しんでいるのだなと思いました。」

N. H. プリチャード 1939年ニューヨーク生まれ、1996年ペンシルべニア死去
小説ムンダスからのページ 1970
「自分の詩や文章をタイプしたその紙面に手を加えて、アートとして発表する発想が素晴らしい。アートに限界がない事を感じられた。」

レーヴェン チャコン 1977年 フォートデファイアンツ、ナバホ国;ニューメキシコ州アルバカーキ在住
「3本のビデオで過去、現在と未来について歌うアメリカ原住民。彼女らが母国語で原住民が受けた扱いに反対する歌は生き残った証です。歌の文句と小太鼓を打つ拍子が図面に書かれて展示されていた。」

レーヴェン チャコン 1977年 フォートデファイアンツ、ナヴァホ国;ニューメキシコ州アルバカーキ在住
トーマス エジソンの最後の息、1931
沈黙のコーラス、音のインスタレーシン 2017
「これってなんでビエンナーレに入ってたのかわからないのですが、なんか面白いなと思って家に帰ってサーチしたら、上記の説明が出てきました。ビエンナーレでは説明全然ありませんでした。なんか、エジソンの臨終の床に思いを馳せてしまいまって、また、その時になんでお医者さんが試験管の蓋を閉めろ、と言ったのか、その心情が知りたいな、と、色々と考えてしまった作品でした。」
空間に流れる遠くからの音はスタンディングロックというスー部族の居留地とノースダコタ州ビスマーク中間地で録音された。2016−2017年には10ヶ月間部族のメンバーと環境保護者達が居留地の飲水の水資源、聖なる敷地、文化財を破壊するパイプラインの建設に反対して膠着状態に陥った。感謝祭の日には女性リーダー達、数百人が抗議、パイプライン会社のセキュリテーと州の警官に向かい沈黙の対立を行なった。音声はわざとよく聞こえないように、今まで押さえられて聞こえてこないようにされていた原住民の状況を表していると黒人の守衛さんから聞いた。エジソンの最後の息とは近代のテクノロジーの必要性に疑問を投げかけている。

ローズ サレーヌ 1992年ニューヨーク生まれ;クウィーンズ、ニューヨーク在住
64,000の循環の試み2020
オークションで購入。2017-2019年ニューヨーク市地下鉄やバスで使われて偽小銭「面白いものに目を向けた作家」アーケードやカジノ、宗教、祈りのトークン、ワッシャーやハードウェアー、ゲームのコインが四つのテーブルに展示され、大都市で生活する庶民の様子を表す。

アルフレード ジャー 1956年 チリ、サンチアゴ生まれ、ニューヨーク在住
06.01,2020 18:39,2022, ビデオ、音、ファン

「2020年に起こったGeorge Floyd事件に声を上げ、平和的に行進する人たちに対して政権側が行った一連の行動をプロジェクションで等身大に映し出すと共に、ヘリコプターが巻き起こす突風を天井からの巨大ファンで体感させるインスタレーション突然上空に現れ、強風と爆音で人々を制圧しようとするヘリコプターが、体制側のもつ暴力的かつ、威圧的なシンボルとして上手く表現されていて、強く印象に残りました。」

この平和的手段での抗議はホワイトハウスの前で行われていた。連邦軍が催涙ガス、スタン擲弾、ゴム弾を発泡した。二つのヘリコプターが低く飛び木の枝がローターに折られた。この様な軍事用ヘリコプターの使用は国政的人権法で禁じられている。ジャーは「私のチリでのピノチェ経験を思い出した」。


 

 

        Seminars top に戻る