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2013年度第2回セミナー:ゴワナス・オープンスタジオ・ツアー

日時:2013年 10月20日 午後1時〜6時半
講師:小林健氏
場所:ブルックリン・ゴワナス 
NYクラブ参加者:小倉千恵、松尾明子、永野みき(順不同、敬称略)

 
小林さんの友人”Ignacio Campo Salinas"のスタジオを訪問。ワインを御馳走になりながら、作品についてお聞きしました。

心地よい秋日和の日曜日、今年2回目となるゴワナス・オープンスタジオ・ツアー行いました。参加者は3名。前回訪れた、近年、アーティストスタジオだけでなく、ギャラリー、さらにはおしゃれなカフェやレストランなども増え続け、アート界では何かと話題になる“ブッシュウィック”に比べ、“ゴワナス”という地域に皆さんの馴染みがなかったのか、はたまた、セミナー担当がアトラクトしない(笑)のか、理由はよくわかりませんが、今回は少人数精鋭でした。
“ブッシュウィック”と同様“ゴワナス”もかなり広く、北はブルックリンの中心で、最近ではバスケットボール殿堂、Barclays Centerも完成し、増々盛り上がるAtlantic Ave. 付近から南に二駅分、東はPark Slope、西はCarroll Gardensという所謂“高級”住宅街、などの間に広がる旧工場地帯です。
しかし、その辺りは、多摩美NYクラブセミナーの方針である“選択と集中”を念頭に入れ、また、前回の教訓も活かし、大規模なスタジオビルディング、プロジェクトスペース等を中心に巡りました。
集合場所となったのは、このオープンスタジオイベントの中心となっており、位置的にはゴワナス地域でも南端に位置するBrooklyn Art Space(168 7th St.)内にあるTrestle Gallery。まず、驚かされるのはこのビルディングの周辺。一年前にはなかったおしゃれなカフェが出来、この地域がどんどん変化していることがよくわかります。Trestle Galleryでは、Brooklyn Art Spaceで制作をしているアーティストの展示が行われており、制作場所と発表の場が与えられる非常に良い環境であることが伺えました。また、Trestle Galleryの横にあるTomomi Onoさんのスタジオに訪れたところ、Galleryに訪れたお客さんが多く立ち寄り、盛況とのことで、アーティストにとって新しい観客を獲得するにはTrafficも重要であることを再認識しました。
Brooklyn Art Spaceを出て、その周辺を徘徊。この辺りは平屋の大規模な旧工場を改装してスタジオとしているところが多く、旧住居用ビルディングのプライベートな空間と異なり、広大な空間を簡単に仕切ってスタジオとしており、よりオープンな雰囲気を醸し出しています。
その中の一角に、トップギャラリーの一つであるPace Gallery系列の、Pace Printsのスペースがありました。未確認ですが、Pace PrintsのGalleryは、マンハッタンの57丁目にありますので、本スペースは通常、倉庫兼事務所として使われていると思います。ここで扱われていたのは、Donald Baechler、Chuck Closeといった本ギャラリー所属のトップアーティスト。ペインティング、ドローイング、プリントはもちろん、アーティストグッズ、本、さらにはアーティストとは関係のない、バザー的な雑貨商品まで置かれるなど、あらゆる客層に門戸が開かれており、余裕を感じさせました。
その後、筆者既知のアーティストのいる二つのアートスペースへ。都合のいい事に、二つとも先述のBrooklyn Art Spaceと同様か、それ以上の規模を誇ります。
最初に訪れたのは、スペイン人のペインター、Ignacio Salinasさんがスタジオを構えるビル(94 9th St.)へ。ここは、これまで訪れたところと異なり、住居用のビルを改装したプライベートスタジオが集まるスペースです。Brooklyn Art Spaceなどができる前からあったらしく、この場で長く、制作を続けているアーティストが多いようです。
Salinasさんは非常に精力的で、スタジオまで近くに近づくと、廊下まで作品が展示されており、たくさんのスタジオがある中、容易にそのスタジオを見つけることができました。Salinasさんは、我々の来訪をとても喜び、このオープンスタジオイベントで、代表作が売れたこと、また今後チェルシーでの展示があることなどを、矢継早に話してくれました。
スタジオを後にし、このビル内を暫し探索。様々なアーティストのスタジオに入って見ました。全体的な印象としては、オーソドックスな作風の作家が多く、人を集めているところは、筆者が昨年訪れた時と、さほど代わっていないような気がしました。
次に訪れたのは、日本人アーティスト、Ai Campbellさんがスタジオを構えるBrooklyn Art Spaceが新たにオープンしたスペース(400 3rd Ave.)。Brooklyn Art Space の特徴は、シェアスペース、セミプライベートスタジオ、プライベートスタジオと、アーティストのスタイルと、予算に合わせ、制作場所が選択できること。Campbellさんは、元の場所のシェアスペースから、こちらのセミプライベートスタジオに移って来たそうです。これまで見て来たスタジオと比べると小規模ながらも、天井からは光が入り、明るく、オープンな印象です。
Campbellさんは、キャンバスに非常に細い線で、具象とも抽象ともいえない、オブジェクトを描くアーティスト。新しくスタジオスペースの壁には、新作、また製作途中の作品が何点も掛かっており、活動の充実ぶりが伺えました。
このスペースは、安価でスペースを使えることもあり、若い人が多く、賑やかな印象。Campbellさんの使うセミプライベートスタジオもまだ空きがあるようで、今後どのようになるか楽しみです。
このスペースを出た時点で4時。ここから、もう2、3件スタジオを巡り、へとへとになり、家路に着くという野暮なことをさせないのが、多摩美NYクラブセミナーの最大の特徴です。日曜日の夕刻、優雅に一日を締めくくるのに必要なのは"ビール"です。Brooklynでビールと言えば、最近続々オープンし、ニューヨーカーの間で話題になっている"ラーメン"店。筆者の前日のリサーチから、有名日本食店"Morimoto"の元シェフが開いたというChuko Ramen (552 Vanderbilt Avenue.) を予定しておりましたが、Campbellさんの推薦で、Ganso (25 Bond St.)急遽変更。

店に訪れてると、昭和をイメージしたインテリアとおしゃれなアメリカ人ウェイトレス。もちろん我々のオーダーは、ビール、はねつき餃子、ラーメン。その味は、今年のセミナーの最後を締めくくるに相応しい、懐かしくも、新しい味でした。
セミナーコミッティ 小林 


秋晴れのゴワナス!30年前にはキャナルからの匂いで誰も見向きもしなかった町が、アーティストが移り住んでびっくりする程開けてきました。今回は参加者3名と小規模でしたが、その分、みんなで見たいだけゆっくり回りました。今回も案内をしてくださった小林健さんに感謝です。最後は、ブルックリンのアトランティクアベニューの近くに最近出来たばかりのラーメン屋”Ganso"にいきました。ビールで乾杯!エビシュウマイ、羽根つき餃子はもちろん、元祖ラーメン、担々麺も美味しかったです。