6月の展覧会 2005年

" ナルシリオン(太陽と月の歌)"

Mael

2005年 6月8日(水) 〜 25日(土)

レセプション:6月10日(金)5:00-7:00PM

開画廊時間 :火〜土 12:00-6:00PM

 

 

" ナルシリオン(太陽と月の歌)"

Mael

 

NYCoo画廊6月、「Narsilion : ナルシリオン(太陽と月の歌)」と題名が付けられたsci-fi/fantasyのイラスト作品展に御案内します。作家はメィル(Maelです。この名前は作家名で、出自の解る本名では作品から受ける印象が極度に限定されるきらいがあるので、英単語maelstrom(大渦巻き、大動揺)の前半分を作家名に使ったそうです。
「Narsilion : ナルシリオン(太陽と月の歌)」とは、Peter Jackson監督の映画「Lord of Rings」の原作者 J.R.R. Tolkienの「Middle-Earth(中つ国)」からインスピレーションを得て,Tolkien作を第一次と考え,このメィル自身が創り出した第ニ次の叙事詩を指す。この個展出品作はこの自作叙情詩に描かれた人物のイラストレイションである。世界中には多くのトールキニアン(Tolkien陶酔者)が存在すると聞くが(Web-site,The Tolkien Society参照)、これらの出品作品もこのトールキンが描き出した世界へのオマージだとメィルは云う。

この描写力を示す作品は20x15インチ、水彩、インディア・インクによる。イメージは、Peter Jackson監督の映画「Lord ofRings」3部作以前の同叙事詩のアニメイション映画化作品「The Return of the King]のイメージの影響は特になく、Peter Jacksonの世界からのインスピレーションによるものと思われる。

原作者 J.R.R. Tolkien(1892―1973)は英国人、オックスホード大学古語英語(Old and Middle English)の学者であった。Middle Englishとはシェックスピア以前の英語とその世界を云う。第一次世界大戦では兄弟の1人が戦死、第二次世界大戦では息子をフランス戦線に送りながら著作が続けられた。彼の思いは国の成生と存続、歴史前の時空、アングローサクソン民族大移動と原住民セルティック、スカンディナビア民族、バイキングとの関連、そして文明が文明を破壊するありさまであったろう。「Lord of Rings」3部作にはキリスト教的善と悪、human compassion, friendship, royalty, love, courage, dignity, honesty等を根底 にして、一つのものを追求する大ロマンが展開する。1人の若いアーティストがこのように大きく限り無い画題を与えてくれる。Tolkienの世界に魅了されずにいられようか。加えて、メディアの影響か、現の若い世代は感覚に問う抽象性より、知覚に訴えるナラティブネス(物語り性)に惹かれるようだ。

最後にメィル自身の言葉を引用してみよう。「そこに描かれた人物と物語に惹かれる者にとっては、そこに何かを見、更に、それは単なる絵を超えるものに進化する。そして、心に糧を与えるものとなり脳裏に残る。心に物語を抱いて生きること、それは『空想に浸って生きる』ということではなく『心に想像力という名の活力と自由を持って生きる』ことなのだ。(一部語句変更)そして、メィルは最近作を個展会場に展示する。

オープニングに出席を強く勧めます。作品を見、作家に会って聞いてください、貴方の質問を。

 

ギャラリーライター 中里 斉